前回の記事では、毎日のように我が家へご飯を食べに来るようになった黒白のハチワレ猫との出会いについてお話ししました。
小柄な体に似合わないほどの食欲と、日に日に大きくなっていくお腹。
「もしかして妊娠しているのではないだろうか」
私は発泡スチロールを利用して簡単な猫ハウスを作り、家の軒下へ置いてみました。
もし使ってくれたらと思ったのですが、残念ながら見向きもされませんでした。
そして、その子は数日間ぱったりと姿を見せなくなってしまいました。
ぺたんこになったお腹で現れた母猫
きっとどこかで出産したのだろう。
そう思いながらも、私は気になって仕方がありませんでした。
どこで子猫を産んだのだろう。
無事に育っているのだろうか。
そんなことばかり考えていました。
それから数日後。
その子は再び我が家へやって来ました。
予想通り、お腹はすっかりぺたんこになっています。
ご飯を用意すると夢中になって食べ、食べ終わると急ぐようにどこかへ帰っていきました。
「子猫たちは無事なんだろうか」
そう思いながら見送ることしかできませんでした。
当時の私にできたことは、母猫にご飯を用意することだけでした。
3週間後に現れた子猫たち
それから約3週間が過ぎた頃のことです。
いつものように母猫がやって来ました。
しかし、その日は様子が違いました。
母猫の後ろから、小さな影がちょこちょこと付いてきたのです。
子猫でした。
しかも一匹ではありません。
三匹の子猫たちが、母猫の後ろを懸命について歩いていたのです。
「本当に産まれていたんだ……」
私は思わず見入ってしまいました。
子猫たちはまだ小さく、歩き方もどこかぎこちありません。
けれど母猫の後を一生懸命追いかけています。
外の世界で生きるための教育がすでに始まっていたのでしょう。
私の姿を見ると、子猫たちは一斉に物陰へ隠れてしまいました。
それでも子猫用のフードを用意すると、夢中になって食べ始めます。
顔をフードだらけにしながら食べる姿は本当に愛らしく、しばらくその様子を見守っていました。
母猫が帰っていく場所
食事を終えると、親子はまたどこかへ帰っていきます。
私は警戒されないよう距離を取りながら、そっと進む方向を見ていました。
すると親子は我が家から二軒隣のお宅の庭先で姿を消したのです。
「もしかして、あそこにいるのかな」
そう思った私は、思い切ってそのお宅の方に声をかけてみることにしました。
女性が抱えていた本当の気持ち
庭先にいた高齢の女性へ声をかけました。
「あの、猫がお庭にいませんか? 子猫がいるようなのですが……」
すると女性は驚いたような表情を見せたあと、
「猫なんて知らないわ! 文句を言いに来たの!?」
と強い口調で返しました。
私は一瞬驚きました。
けれど庭をよく見ると、小さなお皿が置かれています。
さらに廃タイヤの上に板が置かれ、その下から子猫たちの姿が見えました。
どうやら、ここが親子の寝床になっているようです。
雨が入らないように、工夫された廃タイヤのお家。
私が作った発泡スチロールハウスよりも快適に過ごせそうだな。
私は苦情を言いに来たわけではないことを伝えました。
そして
「親子猫を助けたいと思っていること」
「子猫たちが大きくなる前に保護して里親さんを探してあげたいこと」
「母猫も避妊手術を受けた方が安心なこと」
自分なりに説明しました。
すると女性は少し表情を和らげ、静かに話し始めたのです。
「チャコ」と呼ばれていた母猫
その女性は、母猫に「チャコ」という名前を付けていました。
始めは追い払っていた。
それでも毎日庭に来る。
毎日見ていると可愛く思えてチャコと名前を付けてご飯をあげていた。
庭仕事をしていると近くまで来てくれること。
いつの間にか大切な存在になっていたこと。
けれど触ろうとすると離れてしまうこと。
そんな話を少しずつ聞かせてくれました。
そして、
「近所の人から『野良猫にエサをあげるな』と怒られたてしまった」
と打ち明けてくれました。
私はようやく理解しました。
あの時、女性が強い口調になったのは私が苦情を言いに来たと思ったからだったのです。
チャコのことを心配しながらも、どうしたら良いのか分からず一人で抱え込んでいたのでしょう。
保護団体へ送った一通のメール
女性の思いを知り、私の中でも気持ちが固まりました。
この親子を何とか助けたい。
けれど問題がありました。
チャコも子猫たちも警戒心が強く、とても素手で保護できる状態ではありません。
どうしたら安全に保護できるのだろう。
考えた末、私は市内で活動している保護猫団体へ相談することにしました。
その日の夜、状況を詳しく書いたメールを送りました。
正直なところ、すぐに返事が来るとは思っていませんでした。
ところが、その日のうちに返信が届いたのです。
そこには、私が想像していた以上に具体的なアドバイスと、保護へ向けた方法が丁寧に書かれていました。
チャコ親子の運命が大きく動き始めたのは、このメールがきっかけだったのです。
チャコ親子の物語を、前後の記事からお読みいただけます。
◀ 第1話「毎日ご飯を食べに来る猫|お腹の大きな母猫との出会い」
チャコ保護シリーズ



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